2023/12/14
塗装をする際の養生作業は、簡単に言うと塗装箇所以外への塗料の飛散を防ぐ目的で行われます。
しかし単純にシートで覆えば良いという訳ではありません。
例えば養生テープの貼り方が雑で歪んでいると、養生を外した際、テープと塗装した箇所の境目も歪んでしまい美しい仕上がりになりません。
養生作業の出来が塗装の出来を左右すると言われるほど重要な工程なのです。
今回は養生を行う詳しい理由や基礎知識についてご説明しながら、養生中も快適に過ごすためのポイントなどについてお伝えしていきます。
養生作業の目的
冒頭でも少し触れましたが、養生作業を行う理由にはいくつかあります。
ここでは主な養生の目的について詳しくご説明していきます。
●●塗料の飛散から保護する
前述したとおり、塗装箇所以外への塗料の飛散を防ぐ目的です。
外壁塗装にはローラーや刷毛を使用して塗装を行っていく方法と、スプレーガン等を使用して塗料を吹き付けて塗装を行っていく方法があります。
特に吹き付け塗装を行う際、強風時には塗料が風に乗って近隣のお住まいや車などに飛散してしまう可能性もあります。
そのため現場周辺に塗料が飛散しないよう、建物周辺に組んだ足場にメッシュシートを張って養生する必要があります。
このとき張られるメッシュシートは、塗料だけでなく高圧洗浄による水しぶきや、下塗り前のケレン作業で発生するサビの粉などからも保護するのを目的とし、作業員の落下防止の役割も果たしています。
また養生で覆う箇所は建物周りだけに限らず、敷地内の車や植栽、カーポート、エアコンの室外機、給湯機など細かな所まで行う必要があります。
●●部位ごとに塗り分けが行えるようにする
軒天や雨樋、雨戸といったような付帯部は、工事内容によっては塗装が行われない場合や、あとから別の塗料で塗装される場合があります。
またサイディング等の目地にコーキングを打つ際も、外壁材の周辺にコーキングがはみ出さないようにしなければなりません。
このような箇所は、塗装を行わない間ビニールやテープなどでカバーしておき、周辺の塗装終了後に養生を行って塗装に移ります。
少々手間にはなりますが、一つずつ交互に養生を行うことで塗料などがはみ出したり付着したりするような施工ミスを防ぐことができます。
●●養生により真っすぐな線を引ける
真っすぐな線を引く場合は、前もって塗装箇所にマスキングテープを使用して養生が行われます。
マスキングテープを貼ったまま塗装を行い塗料が乾燥した後に剝がすと、テープの跡に沿った真っすぐな線を作ることができます。
このときテープが歪んでいると仕上がりのラインも曲がってしまうため、職人さんの腕の見せどころでもあります。
養生しないとどうなる?
上記のような理由から養生作業は行われていますが、この養生をしなかったり丁寧に行われていないとどのような影響があるのでしょうか。
塗料は液体のため、塗装工事を行っているとどうしてもベランダの手すりなどに垂れてしまったり、塗装しなくていい部分にまで塗料がついてしまうことがあります。
塗料は時間が経つと硬化して塗膜を作りますが、付着した塗料は絵の具のように簡単に取れるものではありません。
飛散した塗料を拭き取るには剥離剤やシンナー等を使用しますが、塗装したところに他の塗料が付着すると、拭き取る際に最初に塗った塗装まで溶かしてしまい品質が落ちてしまう可能性もあります。
最悪の場合は再度の塗装が必要となることもあるため、余計な作業が増え工事期間が延びてしまう原因になります。
また、塗装する部分としない部分の境目(取り合い部分)を綺麗に塗り分けることができません。
その結果塗らなくていい部分まで塗料がはみ出したりと、仕上がりの美しさが損なわれます。
さらに周囲に塗料が飛散することで近隣トラブルに繋がることも考えられます。
近隣の庭木に塗料が付着し枯らしてしまう、所有の車に飛んでしまうといったようなトラブルに発展すると、汚損に対する弁償など塗装工事以外にも余計な時間や費用がかかってしまいます。
このように、養生をしないと現場が汚れるだけでなく、塗装の出来映えや近隣にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
養生に使用される道具
ここでは主に養生作業で使われる道具についてご紹介いたします。
様々な種類がある養生材を、現場の状況に応じて無駄なく適切に使用する技術も業者に求められるポイントとなります。
●●ブルーシート
屋外での作業となる外壁塗装では、塗料や工具などを広げるスペースが必要となります。
一時的に外壁の周りに塗料缶や工具などを置く際は、床面を塗料で汚したり工具で傷つけてしまわないようブルーシートを敷いて保護します。
このブルーシートは床面だけでなく、足場周りに張り巡らせて飛散防止シートとして使用されることもあります。
●●メッシュシート
塗装工事現場などでよく見かけられる、建物全体を覆ったグレーのシートです。
外壁塗装の際に塗料や高圧洗浄時の汚水、ホコリなどが近隣へ飛ばないようにするためのものです。
ブルーシートに比べて軽いため重圧感がなく、強風の抵抗を受けにくい造りとなっています。
さらにメッシュ状になっているので、建物全体を覆っても通気性を確保でき、塗料の匂いが足場の内部で充満しにくくなります。
吹き付け塗装の際は塗料が通過してしまう恐れがあるため、メッシュ構造になっていないブルーシートと併用する場合もあります。
●●マスキングテープ
最近では雑貨などでもよく目にするようになったマスキングテープですが、外壁塗装では作りが丈夫な無地の塗装専用マスキングテープが使用されます。
塗装用マスキングテープは、剥がすときに下地を傷つけないよう粘着力が弱いという特徴があります。
貼り付けが甘いとテープの隙間から塗料がはみ出してしまうため、サイディングのように凹凸のある外壁材に貼るときはきちんと凹凸に沿って塗面にしっかりと密着させる必要があります。
●●ポリフィルムシート
薄手の透明ビニールシートです。
ポリフィルムシートは外壁塗装だけでなく、雨よけ等として建築工事全般で使用されており定番の養生材となっています。
また現場の安全性を保つため、フィルム表面がエンボス加工された滑り止め機能付きのスリップシートタイプ等もあります。
●●マスカー
ビニールシートとマスキングテープが一体化した養生材です。
施工箇所に貼ると布テープの下からビニールが広がる構造になっており、広い面を覆えるようになっています。
養生中も快適に過ごすために
家周りの養生が撤去されるまでには、大体1週間以上の工事期間が必要です。
その間シートなどで覆われた中で過ごさなければならないため、なかなか普段通りの生活ができないのではと不安に思われる方も多いかと思います。
少しでも日常生活への影響を少なくし快適に過ごせるよう、打ち合わせの際には業者にしっかりとご相談されることが大切です。
●●開閉したい窓やドアは事前に伝えておく
キッチンや浴室の窓など、できるだけ窓を開けたい場所はあらかじめ業者に伝えておくことで、毎日作業後に養生を外してもらうこともできます。
また工事を行っていない夜中などは基本的に窓の開閉は可能となっています。
●●養生中もエアコンや換気扇の使用は可能
塗装中に窓を開けられない期間はもちろん、特に夏場や冬場は温度調整のためにエアコンを使用する確率が高いかと思います。
メッシュカバーで設備を覆うことで塗装中もエアコン、換気扇、給湯機などの使用は可能です。
こちらも事前に業者へお伝えしておくことをおすすめいたします。
最後に
以上のように、養生作業は塗りの工程に比べ目立たない作業ではありますが、工事全体の作業効率や塗装の仕上がりに非常に大きく関わってくる大変重要な工程です。
そのため業者選びをする上でも、養生を丁寧に行っている業者は信頼できる業者といっても過言ではありません。
塗り替えをご検討中の方は、今回お伝えしたポイントもご参考にしていただければ幸いです。
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この記事を書いた人
代表取締役 戸髙 勇樹
保有資格:外装劣化診断士、一般建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者、アステックペイント技術認定者
業界歴・経歴:約17年以上。大手リフォーム会社に就職後、一度は塗装業界を離れるも、「人に感謝される仕事がしたい」と、ベストホームに入社。1500棟以上の塗装工事を実施。
出身地:北九州市小倉北区
コメント:創業以来24年、福岡県北九州市を中心に外壁塗装・屋根塗装・防水工事・リフォーム工事を行っております。
塗装工事はどの業者に頼まれても塗ったばかりはキレイだと思います。塗装工事で差が出るのは〈数年後〉です。塗装工事を行い数年経過しないと適正な工事をしたのかがわからない、ここが塗装業者選びの難しいところです。塗装の高品質団体プロタイムズは『社会に貢献できる塗装・社会に誇れる塗装』をご提供させていただきますので、塗装工事でお悩みの際はお気軽にご相談ください。