2024/02/19
軒天(軒裏、軒下)部分の塗装は面積が小さくても、景観に関わる大事な部分です。しかし湿気などで脆くなりやすい部分でもあります。
他のところがどのように見栄えが良かったとしても、軒天が剥がれていたりするだけで美観性に欠ける印象を与えてしまうでしょう。
今回は軒天に使われている材料がどういったものなのか、どのように補修していけば良いのか、塗装などであれば相場はいくらぐらいか等を詳しくご説明していきます。
軒天とは
軒天は屋根(切妻屋根などの陸屋根以外の屋根全般)が外壁より飛び出しているところの裏側に当たる部分です。軒下、軒裏、軒裏天井、上げ裏などと言います。
破風板、雨樋、鼻隠しなどと一緒に付帯部分と呼ばれており、外壁や屋根以外の部分として塗装の際は分けられます。
屋根がどれくらい建物から飛び出すかによって軒天の大きさは変わってきます。屋根があっても軒天がなかったり、1メートルほどの軒天がある場合もあります。
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軒天の材料
軒天によく使われる材料として、ケイカル板、スレート板、エクセルボードなどがあります。
以下ではそれぞれの特徴についてご説明いたします。
●●合板、ベニヤ板
合板とベニヤ板は厳密には違うのですが、軒天においてはほとんど同じような意味で使われます。昔はよく使われていたため、古くなっている家の多くで合板の軒天を見ることができます。
上から別の模様のシートを被せることで(例えばひのきの模様など)、様々な風合いを出していました。これを化粧合板、もしくは化粧板と言います。
合板は薄い木の板の重ね合わせで非常に軽いです。しかし耐久性が高くないので、あまり目立たない、耐久性を求められない軒天に使われる事が多かったのです。
ただ、耐火性、耐水性にはそこまで優れていないので、近年はケイカル板を使うことがほとんどです。それでも非常に安価なことから、今でも工事費用を安く抑えようとする場合に軒天にベニヤ板を使うこともあるようです。
何枚もの木は接着剤によってくっついているので、経年劣化で接着剤の力がなくなり剥がれてしまうということも多くあり、剥がれた場合は非常に見た目が悪くなってしまいます。
●●ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)
軒天の材料として非常によく使われるのがケイカル板です。珪藻土、消石灰(水酸化カルシウムのこと)、石綿(アスベスト)、水で出来た合板です。
軽く丈夫で、非常に強い耐火性、耐水性を持っているので、台所、洗面所、暖炉など建築業界の様々なところで使われています。
法律上「燃えない材料」という意味の法廷不燃材に認定されています。昔のものであれば石綿(アスベスト)が使用されていましたが、今現在アスベストは使用を禁止されているので、ノンアスベストを使用するのが主流になっています。
ケイカル板には、表面に穴がたくさん縦横に空いている有孔タイプがあり、通気性を確保しているものもあります。また、タイルのような模様や、木目のような模様を表面から貼っているものや、板自体に色がついているカラーケイカル板もあります。軒天にはめてから塗装をする方ももちろん多いです。
また、化粧合板のようにケイカル板の上から模様がついたシートを貼って加工してあるものもあり、デザインボード、デザインパネルなどと呼ばれることもあります。
ケイカル板の特徴として、湿気などである程度動いてしまうため、目地(境目加工)やジョイナー(境目に取り付ける器具)などで遊びを持たせなければずれてきてしまいます。
●●スラグ石膏板(エクセルボード)
スラグは必要なものを取り除いた後の残りかすの鉱物のことで、それにさらに再利用された石膏を混ぜ合わせて固めた板がスラグ石膏板です。別名エクセルボードともいいます。
元がスラグと石膏という鉱物なので燃えません。ケイカル板同様、法定不燃材に認定されています。
●●フレキシブルボード
セメントに繊維質のものを混ぜて強化したもので、別名繊維強化セメント板とも呼びます。これも法定不燃材です。スレート、またはスレートボードなどと呼ぶ場合もあります。
●●金属板
軒天に加工した金属板を使うこともあります。錆びにくい金属であったり、ガルバリウム鋼板、アルミスパンドレルという名前の金属板を使うこともあります。金属なので軽いです。
屋根がそのまま軒天を包み込むように施工されている場合もあります。
●有孔板について
軒天に使用する板に穴が空いているものがあり、これは空気を通すために作られています。軒天に穴があるだけでは通気にならないので、屋裏頂部や棟部などにも通気口が有り、空気の通り道を作っています。
防火有孔板というものは、板の一部にだけ穴が空いている有孔板のことです。
通気口の役割もしながら防火の役割も果たしており、建築基準法の定める「準耐火構造」の建物に使用できます。火災保険などでの構造を採用している必要がある場合もあります。
また面の全てに穴が空いているものを全面有孔板と言い、準耐火構造の家には使えないものの通気性が高いです。
●見積書で見るEPやAEPとは?
見積書で見られる「軒天塗装EP塗り」や「軒天塗装AEP塗り」といった表現ですが、EPはエマルションペイント、つまりエマルション塗料のことです。
エマルションというのは、違う成分の分子が均一に存在していると言う事で、卵黄と油が均一に存在しているマヨネーズの状態のようなものです。
水で溶かして使う絵の具もエマルション塗料と言い換えることができます。つまり、雨があたる外装材にはあまり使われません。逆に水性で健康を脅かしにくいので内装によく使われます。
AEPというのはアクリルエマルションペイントのことで、エマルションのアクリル塗料と言う事になります。
軒天の劣化症状
どのような箇所にも経年劣化の不具合が出てくるものですが、軒天の場合は、どのような症状が出てくるでしょうか。確認しておきましょう。
症状 | 説明 |
色褪せ | 紫外線に当たりにくい場所ではあるものの、それでも照り返しなどで色あせは徐々に起こってしまいます。 |
シミ | 軒天にシミが出来ている場合は、雨漏りの危険性が高いです。なるべく早く専門家に確認してもらうことをおすすめします。 屋根がきちんと排水出来ていない場合は、屋根から家の内側に入り、そこからさらに軒天の内側に雨水が到達します。そこで初めて軒天にシミとなって現れるのです。 |
剥がれ | 合板や化粧板に多い劣化現象です。表面の数層だけが剥がれてしまっている場合や、軒天の板ごと剥がれて落ちてしまう場合もあります。 塗装をしてある場合は、塗装がうまくついておらず塗膜剥離が起こる場合もあります。 |
藻、カビ | 湿気や雨水などがしっかり排水できていない場合には、軒天の表面に藻やカビが繁殖してしまいます。 |
欠落、穴 | 古くなった部分が欠落してしまう、もしくは一部分に穴が空いてしまう場合があります。鳥などの動物や、虫などが入り込んでしまうかもしれません。 |
軒天の補修方法と費用相場
上記のような軒天の不具合が起こった場合、どのような補修方法があるのか以下ではご説明していきます。
単価相場についてはあくまで目安となりますので、ご参考程度にご覧ください。
●●塗装
軒天塗装の単価相場:500~1500円/㎡(足場代別)
新築後最初の外壁塗装時にそこまで目立った不具合がなく、塗装のみで保護できる場合は塗装を行います。板と板の間に目地(境目)があるかどうか、目地にジョイナー(板と板をつなげるための金属棒)があるかどうかなどで若干異なってきますが、大まかに以下の工程となります。
軒天はあまり日が当たらないので良い塗料でなくていいという場合は上の相場ですが、シリコン、フッ素など外壁などに合わせるという場合はさらに金額が高くなります。もちろん、外壁や屋根にランクを合わせた方が安心です。
軒天塗装の工程
- サンドペーパーなどで表面の汚れをしっかりととる
- 皮スキで剥がれなどを剥がしきってきれいにする
- 目荒らしを行う(わざと表面に細かいキズをつけて塗料の付きをよくする)
- シーラーなどの下塗り剤を塗布する
- 上塗り塗料を二回塗る
目地にジョイナーがある場合は、下塗り剤を塗る前に錆止め塗料を塗りますし、クギ部がへこんでいるのでパテで埋めて平にするという作業もあります。
●●張り替え(交換)
軒天張り替えの相場:一軒当たり15~20万円(足場代別)
軒天の板が劣化していて塗装ではどうにもならない場合は、板ごと交換をする必要があります。
一部のみ大きく破損している場合でも、ベニヤ板などの場合であれば全て取り替えた方が耐久性の面でもコスト面でも良いでしょう。一部だけ替えてしまうと劣化のスピードが違うので、頻繁に足場を組む等の手間と費用がかかってしまう可能性があります。
張り替えは、ケイカル板などを軒天に合うように加工していく必要があるので、塗装屋さんではなく大工さんの仕事の範疇となります。撤去解体、取り付け作業などが入るので、自ずと高額になりがちです。軒天に貼り付けた後、塗装を行います。
ちなみに足場代は別でかかってしまうので、外壁塗装や屋根塗装など別な大規模工事のついでにやるのが良いでしょう。
最後に
今回は軒天に使われている材料の種類などについて詳しくご説明しました。
軒天は塗装面積が小さいため一見目立ちにくそうではありますが、他の付帯部同様、建物の美観性・耐久性を守る重要な役割をしています。
塗装をご検討の際はぜひ今回ご紹介した内容をご参考に、付帯部塗装にも着目されてみて下さい。
弊社では、お住まいの状況に合わせた塗装プランのご提案しております。
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だからこそ、プロである私たちがお住まいごと、お客様ごとに最適な塗料・プランをしっかり検討いたします。
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この記事を書いた人
代表取締役 戸髙 勇樹
保有資格:外装劣化診断士、一般建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者、アステックペイント技術認定者
業界歴・経歴:約17年以上。大手リフォーム会社に就職後、一度は塗装業界を離れるも、「人に感謝される仕事がしたい」と、ベストホームに入社。1500棟以上の塗装工事を実施。
出身地:北九州市小倉北区
コメント:創業以来24年、福岡県北九州市を中心に外壁塗装・屋根塗装・防水工事・リフォーム工事を行っております。
塗装工事はどの業者に頼まれても塗ったばかりはキレイだと思います。塗装工事で差が出るのは〈数年後〉です。塗装工事を行い数年経過しないと適正な工事をしたのかがわからない、ここが塗装業者選びの難しいところです。塗装の高品質団体プロタイムズは『社会に貢献できる塗装・社会に誇れる塗装』をご提供させていただきますので、塗装工事でお悩みの際はお気軽にご相談ください。