2024/02/20
最新塗料の「ラジカル塗料」が開発されたことによって、ますます外壁塗装の塗料選びは頭を悩ませる問題となりました。
これまで外壁塗装で使われてきた、シリコン樹脂塗料やフッ素樹脂塗料と、ラジカル塗料にはどのような違いがあるのでしょうか。
特徴や効果を知らずに、業者さんに勧められるままに選んで後悔しないように、今回はラジカル塗料の特徴や価格帯についてご説明していきます。
ラジカル塗料は塗料の新しいグレード
ラジカル塗料は2010年代に販売されたばかりの新しい塗料です。
これまで外壁・屋根塗装に使われていた、シリコン塗料やフッ素塗料のデメリットを補う次世代塗料として、外壁塗装業者でも徐々に取り扱いを始めるところが増えてきました。
●●塗料のグレードが5段階に
ラジカル塗料が登場するまでは、塗料のグレードは4段階に分かれていました。
4段階の塗料をグレード順に表すと以下のようになります。
アクリル樹脂塗料<ウレタン樹脂塗料<シリコン樹脂塗料<フッ素樹脂塗料
ラジカル塗料のグレードは、上記のシリコン塗料とフッ素塗料の中間に位置します。
近年ではラジカル塗料を加えて、5段階で塗料のグレードが表されるようになりました。
ラジカル塗料の成分
ラジカル塗料は、フッ素塗料やウレタン塗料と違って、主成分が塗料名に記載されていない塗料です。
以下ではラジカル塗料の成分と、ラジカルと呼ばれている理由についてご説明いたします。
●●ラジカルは塗料を劣化させる存在
塗料は顔料で色づけされていますが、この顔料が紫外線や雨水によるダメージで劣化すると、顔料に含まれる「酸化チタン」からラジカルという劣化因子が発生するようになります。
このラジカルは、塗料の樹脂そのものを破壊してしまうため、発生したラジカルをキャッチし力を抑えることができれば、塗料はより長持ちすることができます。
つまりラジカル塗料とは、「ラジカル」を補足し、抑制する力に特化したラジカル制御型塗料のことです。
●●ラジカルを生まない仕組み
ラジカル制御の仕組みは、各メーカーによって異なりますが、基本的には、
- ラジカルを発生させない仕組み
- ラジカルを封じ込める仕組み
の二つが加わって、ラジカルを制御しています。
ラジカル塗料のメリット
ラジカル塗料が注目されている最も大きな理由が、リーズナブルかつ耐久性にも優れている点です。
それに加えて施工性も高く作業部位を選ばないことから、依頼側・施工側ともにメリットの多い塗料となっています。
●●コストパフォーマンスが高い
現在、外壁塗装で最も広く普及しているのはシリコン塗料です。
シリコン塗料は、耐久性はフッ素塗料には劣るものの、施工価格がフッ素塗料の3~5割ほど安く、塗料としての性能も十分備えている人気塗料となっています。
そのシリコン塗料とほぼ同じ施工価格でありながら、フッ素塗料に引けを取らない性能を持っているという点がラジカル塗料の魅力のひとつです。
●シリコン、ラジカル、フッ素の違い
ラジカル塗料の耐用年数と㎡あたりの施工単価を、現在も定番塗料として使われているシリコン塗料と最高位グレードのフッ素塗料で比較すると以下のとおりです。
- シリコン塗料…約10~12年、㎡あたり約2,000~3,000円
- ラジカル塗料…約14~16年、㎡あたり約2,800~3,300円
- フッ素塗料…約15~20年、㎡あたり約3,500~5,500円
ご覧のように、ラジカル塗料はフッ素塗料の耐久性と、シリコン塗料のリーズナブルさの両方を併せ持っています。
●●塗装する場所を選ばない
ラジカル塗料は伸びがよく密着性にも優れた、作業性が非常に高い塗料です。
滑らかに伸びて素材にしっかり密着するため、形が複雑で入り組んだ外壁や屋根でも比較的スムーズに塗装できます。
また外壁材ごとに適した下地材を選べば、窯業系サイディングはもちろん、ガルバリウムなどの金属系の外壁材や、モルタルやコンクリートなど、種類を問わず塗装が行えます。
●●非常に優れた耐候性
ラジカル塗料は、塗膜の内側から劣化を防ごうとする塗料です。
従来の塗料は、塗膜面の保護力で紫外線や雨水をブロックすることに特化していましたが、ラジカル塗料には塗膜の力に加えて、内部の制御システムも加わっているため、
ダブルの力で紫外線のダメージを防ぐことができます。
ラジカル塗料のデメリット
いまだシリコン塗料が第一線の外壁塗装業界では、ラジカル塗料はそのメリットにもかかわらず、名前を知らないという人も少なくありません。
知名度の低さは決して塗料の性能には影響しませんが、施工事例が少なく実際に使われている様子が想像できない点は、やり直しがきかない外壁塗装において大きなハンデであると言わざるを得ません。
●●知名度が低い
外壁塗装業者はホームぺージやチラシで、取り扱い可能な塗料の種類を記載してくれています。
ところがその一覧に、ラジカル塗料の名前を挙げている業者はほんの一部です。
もちろんお客様からのリクエストがあればラジカル塗料を用意してくれる業者もありますが、取り扱った経験すらないという業者さんの場合は、断られてしまう恐れがあるでしょう。
●●施工事例が少ない
家電や消耗品を選ぶときを想像してみるとわかりやすいのですが、どんなに高性能ですばらしい効果が宣伝されている商品でも、実際に使った人のクチコミで「期待はずれだった」と書かれていれば、購入をためらってしまいます。
一方、あまり期待していなかった商品が、クチコミで大量の高評価を獲得していれば、使ってみようかなという気持ちになるかと思います。
このようにクチコミや実際に使った人のレビューが購入を決めるきっかけになる点は、外壁塗装用の塗料においても同様です。
ラジカル塗料の最大のデメリットは、発売したばかりで施工事例が少ないため実際に使用した人の感想がわかりにくい点と言えます。
●データが少ないと効果を確認できない
一般的に外壁塗装は、10~15年に1度の周期で行われる傾向にあります。
シリコン塗料、ラジカル塗料、フッ素塗料など、10年以上前から使われてきた塗料は10年経過時点の塗料の様子を、様々なデータから検証することができます。
しかしラジカル塗料は、2010年代に登場したばかりの塗料ですので、現在において10年以上経過した事例はあまり多くありません。
●塗料の効果は10年経つまでわからない
外壁・屋根用の塗料は、基本的に10年近く効果が持続すると考えられていますが、塗料の耐久性は気候や日当たり、建物の立地、職人の技術力などによっても変わってきます。
耐久性に優れたシリコン塗料やフッ素塗料でも、10年以内に劣化してしまうケースが存在しますが、そのような場所では工法や塗料選びを工夫して対策を立てることができます。
しかしラジカル塗料は10年以上経過したデータが少ないため、本当に効果が得られるか実際に10年経過するまでわかりません。
そのため「効果がわからないものをお客さんに勧められない」という理由で、ラジカル塗料の使用に不安感を持つ業者もいるようです。
最後に
ラジカル塗料はシリコン塗料とほぼ同価格で、フッ素塗料に劣らない耐久力を持つ塗料ですが、他の塗料に比べ施工事例が多いほうではありません。
不安なときは、ラジカル塗料の取り扱いに長けた業者に直近の施工事例を質問するなどして、少しでも実際の使用データを集めてみることをおすすめいたします。
集めたデータからシリコン塗料やフッ素塗料など、これまで一般的に使われ続けてきた塗料と比較して、ラジカル塗料の効果や耐用年数、施工価格に自分自身で納得できれば、満足のいく外壁塗装リフォームになるかと思います。
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この記事を書いた人
代表取締役 戸髙 勇樹
保有資格:外装劣化診断士、一般建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者、アステックペイント技術認定者
業界歴・経歴:約17年以上。大手リフォーム会社に就職後、一度は塗装業界を離れるも、「人に感謝される仕事がしたい」と、ベストホームに入社。1500棟以上の塗装工事を実施。
出身地:北九州市小倉北区
コメント:創業以来24年、福岡県北九州市を中心に外壁塗装・屋根塗装・防水工事・リフォーム工事を行っております。
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