2023/02/03
インターネットでこのような広告をよく見かけます。何社かを比べてみるとこの金額は「安い!ここにしようかな」と思うのではないでしょうか。しかし中には適切な工事が施されなかった、というケースが少なくありません。これには塗装業界ならではのカラクリが関係しているのです。カラクリを理解して適切な工事をしてくれる業者を見極めましょう。
あてはまる方は要注意
見積りは一括サイトで頼んだ
複数社見積りをとって一番安いところにお願いしようと思う
自分の家の㎡数を知らない
塗装は3回塗りより4回塗りしてくれる業者がいいと思う
見積りに書かれている塗料がどんな塗料なのかわからない
見積書を手に取ったとき、まず目に入るのが「金額」です。3社から見積もりを取ったとして、「A社が一番安いのでA社にしよう」と安易に考えるのは危険です。まずは隅々まで見積書を確認してみてください。使用する塗料はどんなものなのか、塗料は何缶使用するのかなどは明記されているでしょうか。
自分の家を塗装するのであれば、どんな塗料を使用するのか気になるものです。1軒1軒お住まいが異なるように、屋根・外壁の種類や傷み方、お客様が気になっていることは異なります。そのお住まいに合った塗料を使用しているのかきちんと把握しておきましょう。
見積書の中に一般の方の目では見抜くことが難しい罠を仕込んでいることもあります
見積書を確認
「坪数」と「㎡数」
見積書がお手元にある方は見ながらご確認ください。見積書を見たときに、㎡数ではなく坪数が記載されてる場合があります。「〇坪〇円」と記載されているため、一見わかりやすい表記です。
ですが、坪数から正確な塗装面積を出すことはできません。なぜなら1軒1軒お住まいの形状はもちろん、窓や玄関の形、大きさも違います。窓ガラスや玄関などの「塗装しない箇所」を考慮して塗装面積を出す必要があるのです。
さらにお住まいによって高さも違い、平屋なのか、総二階なのか、下屋根があるのか、バルコニーが付いているのかなども塗装面積を出す際に大きく関係します。
このように例え坪数が同じだとしても1軒1軒お住まいによって塗装面積は異なります。よって、「〇坪〇円」という表記は塗装には全く関係のないものなのです。塗装の見積りを依頼する際は、きちんとお住まいを隅々まで測って見積りを出してくれる業者にお願いしましょう。
塗り回数が全て?
「○回塗り」
塗る回数が多ければ多いほど手抜きせず「丁寧に仕上げてくれそう」という安心感がうまれます。しかし、塗る回数が多い業者が必ずしも良い業者というわけではありません。塗料には持っている性能を発揮するための塗膜の厚さ(膜厚)というものがあります。中には「4回塗ります」と言って1回に塗る塗料の量を減らして薄く塗り、4回塗りとしてしまうケースもあるのです。
どちらも4回塗りですが、左は実質1回塗りと変わりません
毎日、工事を見て薄く塗っていないか確認することはほぼ不可能です。そんなときに着目するのが見積書に記載されている「缶数」という欄です。
“塗装面積に応じた適正塗布量を満たす量を提示されているのか”が鍵となります。ただ缶数は適正でも本当にその量で施工しているかはまだ不透明なので、以下の内容が報告にあるのであれば安心といってよいでしょう。
工事が始まると何の材料を使用しているか記録・報告するために、搬入写真を撮影します。これは工事を依頼した業者によってするかしないか、見積書提出の前後か契約時に説明があるはずなので、写真を撮影するといった説明がない場合は事前に確認してみてください。
塗装作業終了後、使用後の塗料缶写真である空缶写真を撮影します。適正塗布量を守っているか明確にするために、使い切った塗料缶は潰すか寝かせた写真であることが望ましいです。
契約時に交わした内容で施工するとは限らないのが塗装業界です。一般の方には「やりすぎなのではないか」というお声もいただきますが、m²数に応じた塗布量を守ることは塗る回数よりもいかに大切かということがご理解いただけるかと思います。
それ安心?
「上塗りの色変え」
塗装は全体を均等に塗らなければなりません。上塗り1回目と2回目を同じ色で塗ると、どこまで塗ったか分からなくなるのではないかと不安のお声をいただくことがあります。
確かに色を変えると塗り残しがない、手抜き工事をしていないとわかるため安心材料のひとつかもしれません。
上図は上塗りの色変えと同色を比べたもの、仕上がりの色はどちらも上塗り2回目の色です。
ということは色変えでは上塗りは1回しか塗られていないことになり、同一色では上塗りは2回塗られていることになります。上塗り1回目の色を変えると塗装したばかりの頃は違いは現れませんが、数年経ち色褪せてきた頃に比べてみると、色変えをしてしまったお住まいでは上塗りの色が褪せ、上塗り1回目の色が出てきてしまいます。
塗装をすると光沢が出て、上塗り塗装中であれば1回目塗装後と2回目塗装中では同色でも色が違います。塗装中は色が薄く見えるのですが、乾くと色が濃くなり同じ色になるのです。
上塗りの色変えで100%安心することはできません
根拠が不透明
値引きの真実
早期劣化や不良施工を避けるために、どのような根拠から値引きが実現したのか詳細を明確にする必要があります。見積書の金額が極端に安い場合は、大幅な値引きをするために以下のことをされている可能性があります。
乾燥時間を守らない
○:工事期間を短縮することで、人件費削減による値引きが可能です。
×:完全に乾いていない状態で次の塗り作業に進むと早期劣化の可能性が大幅に高まります。
工程を守らない
○:手間のかかる工程を適当に済ませる事で時間短縮となり作業効率があがるため、施工費削減による値引きが可能です。
×:主に下地処理や下準備段階で発生します。適切な処置がなされていない箇所は早期劣化や雑な仕上がりになる可能性が大幅に高まります。
塗布量を守らない
○:注文材料を減らすことで、材料費削減による値引きが可能です。
×:「○回塗り」でもあったように適正塗布量を守らなければ塗料の性能を発揮できず、例え最高水準塗料を塗ったとしても意味がなくなってしまいます。
在庫缶を使用している
○:注文材料がないので、材料費削減による値引きが可能です。
×:塗料にも使用期限があり、期限を過ぎると性能を発揮できず高品質施工を提供できなくなってしまいます。万が一予算面などを考慮し在庫を使用するとなった場合、見積書に在庫缶を使用することは記載されている、またはきちんと伝えてくれたか確認しましょう。
塗装工事には塗料の持っている性能を発揮するために定められた仕様があります
最後に
「安い金額」にはさまざまなカラクリがあります。人件費・施工費・材料費などを考えると「他より何十万も安いのに高品質な施工」というのは不可能です。どこかの金額を減らして施工すると塗装した直後はわかりませんが、2~3年が経過すると異変が起こり始めます。
しかし、できるだけ安くしたいと思うのは当然のことです。見積りの内容を隠して安くするのではなく、見積りの内容をきちんと見せてくれる業者にお願いしましょう。