2023/12/13
現在の住宅市場では戸建て住宅の70%をサイディング外壁が占めていると言われています。
このサイディングボードにもいくつか種類があり、それぞれに違った性質を持っています。
そもそもサイディングに塗装は必要なのか疑問を持たれている方もいるかもしれませんが、今回はサイディングボードの基礎知識に触れながら劣化症状や塗装の必要性等についてご説明していきます。
通気工法と直張り工法
サイディングボードとは工場であらかじめ成型されて作られた板材のことで、ボードの間にはつなぎ目ができるためコーキング剤を使って気密性や防水性を上げています。
ボードを外壁に貼り合わせるだけの作業になるので、手作業で外壁を形成するモルタル外壁よりもコストや工事期間を抑えることができます。
また、タイル調やレンガ調といったように意匠性に富んだデザインが多いため、建物の雰囲気を自分好みにアレンジすることもできます。
以下ではサイディングボードの外壁構造についてもご説明していきます。
●●通気工法
通気工法とは、外壁内に水分や湿気が溜まることを防ぐために、透湿防水シートが施された外壁とサイディングボードの間に通気層を設け通気性を確保した工法です。
透湿防水シートの上に通気用の「胴縁」を取り付け、サイディングのつなぎ目に「ハットジョイナー」というジョイント用の金物を使用してサイディングを貼り付けます。
この通気性が確保されていないと、外壁内に湿気が入り込み内部結露を引き起こす可能性があります。
内部結露が発生するとカビが発生したり、外壁内部の木・鉄部が腐食したり、建物の耐久性に影響を及ぼします。
このような内部結露を防ぐために開発され、2000年以降では多くのメーカーや工務店が標準施工としています。
●●直張り工法
直張り工法とは、通気工法と異なり透湿防水シートの上に胴縁を取り付けずに直接サイディングを張る工法です。
胴縁を取り付けないため、透湿防水シートとサイディングとの間に通気層ができず、湿気が外壁内に溜まりやすいという特徴があります。
サイディングは水によって劣化が進みやすい材質でもあるため、直張り工法で施工されたサイディング外壁は外壁内部に溜まった湿気で劣化が助長されやすく、
さらにその湿気によりサイディングの表面上に様々な不具合が生じやすくなります。
このような理由から現在では直張り工法で施工されるケースは非常に稀です。
また、直張り工法では前出のハットジョイナーが使用されず施工されていることも多いため、コーキング打替えの既存撤去時にカッター等で透湿防水シートを傷つける恐れもあったりと、
メンテナンスの際にも問題が生じやすい工法でもあります。
サイディングの種類
色や柄のバリエーションが豊富なサイディングですが、一口にサイディングと言ってもいくつか種類があります。
ここではその4種類についてご説明いたします。
●●窯業系サイディング
窯業系サイディングとはセメントに木材繊維などの繊維質を混ぜて高温で焼成し、薄い板状に加工した外壁材です。
高温で焼いているため耐火性や耐震性に優れているという特徴があります。
さらに窯業系サイディングは「塗装仕上げ」と現場で塗装される「無塗装板」にも分けられます。
サイディングは通常さまざまなデザインに塗装された状態で販売されていますが、無塗装板は下塗り処理を施されただけの状態で販売されています。
そのため調色をして自分好みの色にすることができます。
どちらもボード自体は工場で生産されており大量生産が可能となっているため、他のサイディングと比べても初期費用が抑えられます。
●●金属系サイディング
金属系サイディングは、ガルバリウム鋼板やアルミなどの金属でできたサイディングです。
他の外壁材に比べ軽量なことが特長で、窯業系サイディングの約1/4、モルタルの約1/10程度の軽さとなっています。
このことから建物にかかる負担を軽減できるため耐震性にも優れています。
また内側には断熱材が貼り付けられているので、外の寒暖の影響を受けにくいというメリットがあります。
さらに窯業系サイディングは塗膜が劣化すると雨水が外壁に染み込みやすいですが、金属系サイディングは金属の板なので雨水が染み込みにくく防水性に優れているという面もあります。
●●木質系サイディング
木質系サイディングボードは、天然の木材を素材にしたサイディングです。木の呼吸を遮らないよう、表面は炭化処理されています。
他のサイディングに比べると値段は高めですが、木ならではの経年変化や温かみ楽しむことができます。
ただし雨水が染み込むとカビが発生したり腐食したりしやすくなるため、定期的なメンテナンスが必要です。
●●樹脂系サイディング
樹脂系サイディングは塩化ビニル樹脂で作られたサイディングです。
日本ではまだまだ少数ですが、耐久性が高く凍害などにも強いことから北米では50年以上も前から普及しており、高いシェアを誇ります。
樹脂は水分をはじく素材なので湿気や雨による影響では劣化しにくく、樹脂に顔料が練り込まれているため色が剥がれる心配もありません。
サイディングの劣化症状
ここではサイディングによく見られる代表的な劣化症状についてご説明いたします。
このような劣化症状が見られるようになったら、塗料の防水機能が低下しているサインでもありますので、長期的に放置してしまわず早めのメンテナンスをおすすめいたします。
塗り替えのタイミングの目安としてご参考にされてみて下さい。
●●塗装の剥がれ
施工から年数が経つとサイディングの塗装は徐々に劣化していき、剥がれが生じてきます。
塗膜の剥がれが広範囲に及んでしまうと、剥がれた部分から水分が侵入していき外壁材自体を傷めてしまいます。
剥がれが生じたということは塗膜の接着力が落ちているサインなので、業者に調査を依頼するなど早めの対処が大切です。
●●チョーキング現象
外壁表面を触ったときに粉状のものが付く現象を「チョーキング現象」または「白亜化現象」と呼びます。
付着する粉状のものの正体は、塗料の成分に含まれる「顔料」です。
経年と共に外壁が紫外線や雨風の影響を受け、塗膜の劣化が進行して塗料成分(樹脂・顔料・添加剤など)の分離が起きます。
劣化の進行によってある程度分離が進むと、成分の一つである顔料が外壁の表面に現れるのです。
チョーキングが生じているからといってすぐに外壁材がダメになったり、建物に大きなダメージが及ぶことはありませんが、
塗装の防水機能が低下しているサインであり、雨水が浸入し続けてしまえば劣化のスピードが速まるリスクがあるため、長期間の放置は禁物です。
●●ひび割れ(クラック)
外壁のひび割れのことを「クラック」と呼びます。
クラックの幅が0.3mm以下のものを「ヘアークラック」、0.3mm以上のものを「構造クラック」と言い、この構造クラックがある場合は早急なメンテナンスが必要となります。
クラックを放置してしまうと隙間から雨が入り込み、カビや構造材の腐食などの原因となります。
美観性を損なうだけでなく、建物自体の耐久性の低下にも繋がるため注意が必要です。
ひび割れの深さがわからない際は業者に点検を依頼し適切な補修を行ってもらうことをおすすめいたします。
●●カビやコケ・藻の発生
サイディングの凹凸部分に水や汚れが溜まることで、カビやコケ・藻が発生してしまう場合があります。
外壁にこれらが発生しているということは、塗装の保護能力が失われているということなので、これを長期間放置していしまうとサイディング自体の劣化を早めてしまいます。
ひどい場合は、カビが深く根を張ってしまい本来の耐用年数よりも大幅に早く外壁が傷んでしまうこともあります。
合わせて読みたい
外壁のカビやコケ・藻による影響や発生しやすい立地条件などについてまとめた記事はこちらからご覧いただけます。
▶▶【放置厳禁!外壁のカビ・コケ】
●●コーキングの劣化
サイディングの継ぎ目に使われているコーキングも時間の経過とともに少しずつ劣化していき、ある程度進行するとひび割れの症状が現れます。
このコーキングの劣化も長期間放置してしまうと雨漏りの原因になったり、外壁材自体をダメにしてしまう恐れがあるため、
メンテナンスの際に「増し打ち」や「打替え」を行い、目地部分からの雨水の侵入を防ぐ必要があります。
最後に
今回はサイディングについてご説明しましたが、外壁の種類によってそれぞれ特徴や現れやすい劣化症状も異なります。
使われている外壁材の特徴を事前に知っておくことで、塗り替え検討の際の塗料選びもよりスムーズに、理想に沿ったものをご要望として業者へ相談しやすくなるかと思いますので、
ぜひご参考にされてみて下さい。
合わせて読みたい
外壁の塗り替えのタイミングや詳しい劣化症状についてはこちらの記事も合わせてご参考にされてみて下さい。
▶▶【最適な時期はいつ?外壁塗装のタイミング】
この記事を書いた人
代表取締役 戸髙 勇樹
保有資格:外装劣化診断士、一般建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者、アステックペイント技術認定者
業界歴・経歴:約17年以上。大手リフォーム会社に就職後、一度は塗装業界を離れるも、「人に感謝される仕事がしたい」と、ベストホームに入社。1500棟以上の塗装工事を実施。
出身地:北九州市小倉北区
コメント:創業以来24年、福岡県北九州市を中心に外壁塗装・屋根塗装・防水工事・リフォーム工事を行っております。
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